原子核の周りには通常は電子が運動している
原子核の周りには通常は電子が運動している。運動している電子は磁場を作り出すため、これにより原子核のラーモア周波数は影響を受ける。原子核の周りの電子の状態はその原子がどのような化学結合をしているのかに影響を受ける。そのため、その原子が構成している物質の違いによってラーモア周波数も異なる。この物質によるラーモア周波数の違いを化学シフトという。 ハミルトニアンの化学シフト項はγI⋅σ⋅B0と表せる。σは化学シフトテンソルあるいは遮蔽テンソルと呼ばれる。
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ここでσxx、σyy、σzzは化学シフトテンソルの主値、αx、αy、αzは主軸から見た静磁場B0の方向余弦である。 観測している原子核が充分に速く等方的に運動している場合には、化学シフトテンソルは平均化されてスカラーσで表すことができる。これを遮蔽定数という。このときのラーモア周波数はγ(1-σ)B0となる。 いずれの場合もラーモア周波数は静磁場B0に比例する。化学シフトの値を議論する場合には、この磁場依存性をなくすためにラーモア周波数をγB0で割った無次元数を利用することが多い。
遮蔽定数は反磁性項と常磁性項の和で表される。反磁性項は電子のローレンツ力による回転運動により磁場が打ち消される(遮蔽)効果である。例えばs軌道の電子は磁場が存在しない状態では軌道角運動量が0である。しかし、ここに磁場をかけるとローレンツ力により軌道角運動量を持つようになる。この新たに生じた軌道角運動量により作り出される磁場が遮蔽をもたらす。 一方、常磁性項は磁場がかかったことによって電子の軌道が歪み、励起状態が混合することによって生じる項である。例えば電子のpx軌道は軌道角運動量l=±1の軌道が混合して作られている。磁場が無い場合にはこの2つの軌道は縮退しているために混合比も1:1であり結果としてpx軌道の軌道角運動量はクエンチされており0である。しかし磁場がかかると軌道の縮退が破れる。このとき、より安定化されるのは原子核の位置にかけられた磁場と同じ向きに磁場を生じるような軌道角運動量を持つ方の軌道である。軌道の混合比もより安定な軌道の寄与が大きくなるため、磁場を強める効果(脱遮蔽)をもたらす。 荒い近似では反磁性項は核からの電子の平均距離に反比例し、常磁性項は基底状態と混合する励起状態とのエネルギーに反比例し、電子の平均距離の3乗に反比例する。おおまかには原子番号が大きいほど基底状態と励起状態のエネルギー差が小さいため、常磁性項の寄与が大きくなる。また、電子の平均距離は周期表の同じ周期に属する元素では原子番号が大きいものほど核電荷の増加により、小さくなり、やはり常磁性項の寄与が大きくなる。一般に反磁性項よりも常磁性項の大きさが上回り、常磁性項の寄与が大きくなるほど化学シフトの範囲も広くなる。プロトンでは化学シフトは高々20ppmの範囲に収まるが、鉛のような重原子では9000ppm程度まで大きくなる。
プロトンでは、原子核の周囲を回転する電子が1つしかないため、反磁性項、常磁性項いずれの値も小さい。その結果、離れた場所に存在する電子の作り出す磁場が化学シフトに大きな影響を与える。特に分子内の電子が回転運動しやすい状態になっている場合、化学シフトが大きく変化する。代表的な例が芳香環を含む化合物のプロトンの化学シフトである。芳香環では環状にπ電子が非局在化しているため、電子の回転運動が容易な状態となっている。そのため、芳香族化合物に磁場をかけると環に沿って電子が回転運動する環電流が誘起される。環電流は環の平面内には大きな脱遮蔽効果を、環の鉛直方向には大きな遮蔽効果を生じる。また、溶媒の種類への化学シフトの依存性もプロトンが特に大きい。